3月8日国際女性デー。カレワラで働く3人の女性のストーリー

 3月8日は国際女性デー。創立から今まで女性が中心に手掛けてきたカレワラにとっても大切な日です。昨年12月8日に85周年をお祝いしたカレワラは、強い信念と価値観を持ち続けてきました。今に息づく伝統を守り大切にしていくというのはどういうことなのか。カレワラで働く3人がそれぞれの思いを語ります。

「カレワラ創立の物語は今もわたしにインスピレーションを与えてくれます。」

 マリア・ウウニラ
デザイン&サステナビリティディレクター

6年前、わたしがブランド&デザインマネージャーとしてカレワラ・コルに入社した時、とても大きなプレッシャーを感じていました。メーカーにそれまで勤めた経験がなかったうえに、責任の大きな仕事を任され、まるでプールの奥深くにいっきに飛び込んでいくような感覚でした。カレワラの従業員たちはみな会社の伝統を誇りに思い大切にしていて、とても素晴らしい職場だと思います。ここではフィンランドの文化が生き続けていて、その本質をよく反映しているカレワラの誕生秘話に、わたしは今でも感銘を受けます。
 カレワラは1930年後半に作家のエルサ・ヘポラウタの先導によって創立されました。エルサはフィンランド文化を築いてきた女性を称える銅像を設立しようと考えました。その当時、銅像は男性のためのものがほとんどでしたから。資金を調達するために、フィンランド・ナショナルミュージアムに展示されている古代のオーナメントを模したジュエリーが作られ、それが大成功を収めました。ところが戦争が勃発したため、銅像建設のプロジェクトを延期し、売上げは女性や子どもたちを助けるために使われたのです。このことが、女性が中心となって活躍するというカレワラの伝統の基礎を築きました。歴代のCEOは女性で、女性によって創立された「カレワラ・ウーマン・アソシエーション」が今も昔も会社のオーナーであることは、とてもまれなことです。
 わたしが働き始めてすぐ、カレワラの80周年をお祝いする大々的なキャンペーンの計画がもちあがりました。ブランドのイメージビデオ「Untamed Beauty」がソーシャルメディアで公開されたとき、瞬く間にその評判が口コミで広まりました。あらゆるメディアが連絡してきたり多くの著名人がそのビデオの力強さについてコメントを寄せたり、わたしの携帯電話は鳴り続け、まるで天国にいるかのような気持ちでした。そして、女性のイメージをもっと多様化していけるポテンシャルを、わたしたちカレワラが持っていることに気づかされたのです。
 2019年には、会社の収益の使い道がより顕著に社会的役割を担うようになりました。収益の3分の1をチャリティーと自社スタッフのために使うこと決めたのです。カレワラの資金提供により、ケニアの小さな村マコンゲニにカレワラ・トレーニングセンターが設立されました。まもなく4年目をむかえるトレーニングセンターは、若い女性に職業訓練の道を提供しています。2022年には、障害をもつ少女や女性たちが声をあげること、そしてそれが人々に届くことを目的としたVammaiset tytötメディアにも資金提供を行いました。
 この仕事を通じてわたしはより自分に自信をもつようになりました。そして、まわりの人をインスパイアし、模範を示し、自らの行動に信念をもつことの大切さを学びました。

「現代を力強く生きる女性は、人生の手綱は自分で握っている。ありのままの自分であることに、誇りをもっているのです。」
- マリア・ウウニラ

「わたしたちのジュエリーがフィンランドで手作りされていると聞くと、ほとんどの人は驚きます。」

「現代を力強く生きる女性は、大胆で自信にみちた冒険家であり、思いのままに生きることを恐れることはありません。」
- タル・ハルマーラ・シャロフ

 タル・ハルマーラ・シャロフ
モデルメーカー

わたしはフィンランド西部にあるオストロボスニア地方の、あらゆるものを自分たちの手で作る、古い工芸品の伝統を大切にしてきた家庭で育ちました。壁掛けや家具などはすべて手作りでした。母の叔父がフィドルを作っていたのですが、わたしは作業場に忍び込んではノミやカンナを試していました。幼いわたしにはとても魅力的に見えたのです。
 母がよくラッポニアのジュエリーを身に着けているのを見ていて、ジュエリーは芸術作品でもある、と思うようになりました。金細工職人になったのは、この仕事がアートとクラフトマンシップの融合だったからです。わたしはカレワラで金細工職人、そしてモデルメーカーとして働いて14年になります。カレワラのジュエリーができるまでにどれほどの職人技が必要かということ、そしてそもそもフィンランドで作られているということに驚く人が多いです。
 何世紀にもわたるジュエリー製造の技術や伝統を次の世代へ引き継いでいくことを、わたしたちはとても大切にしています。ジュエリーをデザインしたり作っているときに常に意識しているわけではないのですが、そういうものなんです。
 モデルメーカーとしての仕事は、あらゆるアーティストたちと共同制作します。アーティストたちがわたしたち製品開発部門に持ち込んだアイデア、スケッチ、プロトタイプなどをベースに、彼らとアイデアを練っていって、最終的にカレワラのジュエリーとして実現するのがわたしの仕事です。わたし自身もデザイナーなので、アーティストとのコミュニケーションが取りやすいと感じます。カレワラコレクションのうち、「Haltijaハルティア」や「Louhetarロウヘタル」はわたしのデザインです。
 通常約半年ほどかけて、アーティストたちと一つのジュエリーデザインにとりくみます。アーティストが望むとおりの構造や表面、形などを実現するのは難しいことも多々あります。アーティストの思いを汲むのと同時に、商品となるジュエリーは連続生産できなければいけないことを心に留めておく必要があるからです。例えば、ヘイロのデザイナー Jukka Puljujärvi(ユッカ・プルユヤルヴィ)がデザインしたTundra(ツンドラ)は、彼が望む複雑な形状を実現するため、3Dテクノロジーを駆使して何か月も作業を行いました。アイデアはとても大胆で、できあがったジュエリーも本当に素晴らしいもので、わたしはこのプロジェクトに夢中になりました。
 ひとつのジュエリーが出来上がると、わたしはいつも長い時間をかけてそのジュエリーを隅々まで堪能します。そのときの幸福感といったら。例えばある種の留め具を作ったとしたら、何度もつけはずしをして、留め具がたてるカチッという音に聞き入ったりします。
 引退して工芸に携わらなくなるなんてとても考えれません。この仕事がわたしにくれる感情は何にも代えがたい素晴らしいものです。

「アート、専門知識、ストーリーが素晴らしく融合しています。」

 マリ・ウィレニウス
ジュエリー専門家兼
ヘルシンキフラッグシップストア販売員

以前はオークションの世界でジュエリー専門家として働いていました。2017年に個人事業主としてアートとジュエリーの鑑定会社を立ち上げましたが、同僚がいないことが寂しく感じられました。カレワラ・コルは、アート、専門知識、それにストーリーがすべて素晴らしく融合していて、ジュエリー業界で最も興味深い会社に思われました。
 カレワラの伝統は、すべてのお客様との出会いの中で感じることができます。わたしたちはお客様とジュエリーについて、そしてそれがもつ物語、デザイン、そして歴史についてたくさん話します。観光客の方はジュエリーの多くが考古学的発見や民俗装飾品がベースになっていることに驚き喜ばれます。確かに、まるで国宝みたいなジュエリーも多くありますから。海外のお客様はとくに、北欧の自然のエキゾチックさにも感銘を受けるようです。フィンランドの自然は独特で、その落ち着きと静けさはかなり多くのジュエリーに反映されています。
 わたしが好きなデザイナーBjörn Weckströmのジュエリーについてはたくさんの知識と経験があります。彼の作品のタイムレスで控えめなところ、そして力強いデザイン言語と確固としたモニュメンタルさにとても惹かれています。また、多才なデザイナーであるKirsti Doukasにも深い敬意を抱いています。彼女のジュエリーに込められた物語は非常に深く、慎重に考え抜かれたもので、力強いカレワラの物語が現代のことばで語られています。歴史のなかで、会社とブランドは常に変わり続けてきました。その物語をつぎの数十年に引き継いでいく役割を担うのはとても興味深いことです。
 わたしのジュエリーへの愛は、子どものころに始まりました。母はコンテンポラリー・ジュエリーに興味をもっていて、1950年代から1960年代に作られた印象的なジュエリーをよく身に着けていました。89歳になった今でもそうです。わたしが子どものとき、ゴッドマザーが毎年カレワラのジュエリーをプレゼントしてくれました。10歳の時にもらったブレスレットなど、今でも着けているものもあります。ブレスレットはラトビアの伝統的なオーナメントと幾何学的なデザインが組み合わされたものです。ジュエリーの使い方はわたしはどちらかというと控えめですが、でもジュエリーがスタイルの仕上げとなり、一日を気持ちよくハッピーに過ごせるようなムードを作ってくれます。
 毎日誇りをもって仕事に行っています。自分の仕事に興味を持っているふりなんて、全くする必要がありません。

「現代を力強く生きる女性は、強さを内に秘め、自然や自身のルーツを愛しています。」
- マリ・ウィレニウス

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