彫刻家としても有名なビョルン・ヴェクストロム(Björn Weckström)は、国際的にもっとも著名なフィンランド人ジュエリーデザイナーです。ジュエリーブランド・ラッポニアを、創業者ペッカ・アンッティラ(Pekka Anttila)とともに立ち上げ、数多くの独特で彫刻的なデザインを生み出しました。ヴェクストロムは1960年代初め、フィンランドのラップランドでとれる砂金からインスピレーションを得たゴールドジュエリー・シリーズをデザインしました。マットで柔らかな輝きをもつアシンメトリーなゴールドジュエリーは、まるで自然が手がけた小さな彫刻のよう。そのデザインはまだまだ保守的だった当時のジュエリー界に革命をもたらし、ヴェクストロムの名を世界的に有名にしました。オーガニックで彫刻的なデザイン、そしてマットゴールドの温かみのある輝き。これらが彼のゴールドジュエリーの象徴となりました。
ヴェクストロムはシルバージュエリーのデザインにおいて、二つの異なるタイプ、透明感のあるシルバーとマットで柔らかな輝きのシルバーとを掛け合わせるという独特の方法を用いることで、雪に覆われたフィンランドの冬の大自然や凍った湖を表現しようとしました。その大胆で実験的なジュエリーデザインには、透明アクリルや毛皮など、当時としては誰も思いつかないようなユニークな素材を組み合わせたものもありました。ヴェクストロムが目指したのは、ジュエリーデザインを常に進化させること、そしてそれを現代彫刻と対等な立場まで高めることでした。
今日いまなお、ビョルン・ヴェクストロムの60年におよぶキャリアを通じて遺したユニークなデザイン・ヘリテージは、カレワラのコレクションのなかで生き続けています。